西暦 13,000 年の「北極星」

 「なんだ、ベガじゃん」 と瞬時にわかった方、さすがです。おそらく、以下を読む必要はないでしょう。そのほかの方は、もう少しおつき合いください。

 地球の歳差運動( 25,800 年周期 )によって、天の北極は直径約 50 度の大円を描いて変化し続けています。それにともない、天の北極に最も近い位置にある輝星 「北極星」 も代わり続けています。
 古代エジプトの記録により B.C. 2800 頃、「北極星」 はりゅう座 α・ツバーン (視等級 3.6 等、星座早見では 4 等) だったことがわかっています。有名なクフ王のピラミッド内にも 「北極星・ツバーン」 を意識して設計されたと考えられている北向きの通路があります。
 B.C. 1500 頃から B.C. 500 頃まではこぐま座 β・コカブ(北斗七星の枡の先端)が 「北極星」 でした。
 現在の 「北極星」 はこぐま座 α・ポラリス(北斗七星の柄の先端)ですが、天の北極に最も近づくのはまだ先で A.D. 2102 です。

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 次いで、A.D. 3100 頃からケフェウス座 γ、A.D. 5100 頃からケフェウス座 β、A.D. 7800 頃にはケフェウス座 α となり、A.D. 10,200 頃にはくちょう座 α・デネブ、A.D. 11,600 頃にはくちょう座 δ、そしてA.D. 13,000 頃にこと座 α・ベガとなります。
 上記の周期から、B.C. 11,000 年代もベガだったことになります。
 例外なのは、B.C. 58,000 頃のアークトゥルスです。四つしかない視等級がマイナスの 1 等星の一つで、うしかい座 α です。この星は恒星としては異例な短期間で星空を移動する 「高速度星」 なので、「北極星」 だった頃はりゅう座に近い位置にありました。50,000 年後にはおとめ座 α・スピカ付近にまで移動します。オレンジ色のアークトゥルスと白いスピカ、二つの一等星が非常に接近して輝くわけですから、現在のオリオン座や南十字座並み、あるいはそれ以上に目立つ存在になることでしょう。

 

 アークトゥルス

Tokiomi