ケフェウス座

 

 「赤く輝く星」 といえば、惑星ならば火星、恒星ならば α Sco_アンタレス とか α Ori_ベテルギウス が有名なわけですが、厳密にはこれらは 「赤」 ではなくてオレンジ色もしくは橙色です。
 では 「赤い星」 はないのかというと、あります。その一つがケフェウス座の μ Cep です。エラキスという固有名もあるのですが 「ガーネットスター」 という呼称で呼ばれることの方が圧倒的に多く、730 日周期で 3.4 ~ 5.1 等の間で変光する脈動変光星です。直径は太陽の 1,420 倍もあり、赤色超巨星として有名なアンタレス(太陽の 883 倍)や、アンタレスよりも大きなサイズにまで膨張していることが判明したベテルギウス(太陽の 950 ~ 1,000 倍)よりもさらに巨大な星であることがわかっています。
 最近まで、既知の恒星としては最大とされていた VY CMa (おおいぬ座 VY 星)ですが、推定値が見直された結果、現在は6番目までランクダウンし 「ガーネットスター」 とほぼ同じ大きさとされています。

 

 μ Cep_Erakis・「ガーネットスター」 中央

 ここで言い訳を一言。これらの写真の 「ガーネットスター」、そんなに赤くありませんよね。実は、市販のデジタルカメラで天体を撮影する場合、カメラ内蔵の赤外線カットフィルターを除去する作業( IR 改造)をしない限り 「キレいな赤」 には写らないのです。
 なぜ、そうしないのかって? この改造をしてしまうと通常のカメラとしてはまったく役に立たなくなってしまいますし、メーカーに修理を頼むことさえもできなくなってしまうからです!

 

 δ Cep_Alredif 中央

 「宇宙のものさし」 として有名な脈動変光星の一種 「セファイド」 「ケフェウス座デルタ型変光星」 のプロトタイプです。セファイドは、星本来の明るさが同じであるならば、同じ周期で明るさを変えることがわかっているため、見かけの明るさと変光の周期が観測できれば、本来の明るさを決めることができます。さらに、見かけの明るさと本来の明るさを比較することで、距離が計算できるのです。地球から δ Cep までの距離は約 797 光年です。
 ちなみに、太陽に最も距離が近いセファイドは α UMi_Polaris(北極星)で、二番目に近いのがこの δ Cep_Alredif です。

 以前にもふれましたが、天の北極に最も近い位置にある輝星 「北極星」 は代わります。A.D. 3,100 頃には γ Cep(エライ)、A.D. 5,100 頃には β Cep(アルフィルク)、A.D. 7,800 頃には α Cep(アルデラミン)が 「北極星」 になります。A.D. 10,200 頃に α Cyg(はくちょう座デネブ)に移るまで約 7,000 年間、ケフェウス座は 「北極星」 を有する星座になるわけです。

 

Tokiomi